ワーホリハンターなう

海外生活と旅行のブログ

“私がドイツで盗まれた二つのもの”
“映画や音楽などのタイトルにおける冠詞による意味の違い”
“3カ国でのワーホリ中に経験したトラブル集”
“ワーホリ経験者による英語圏5カ国徹底比較!”

私がドイツで盗まれた二つのもの

 

 

2018年の夏、私は長年の夢だった憧れのドイツに短期で語学留学をしました。

13歳のときからドイツという国に憧れており、憧れが過ぎるあまり訪れるタイミングを長い間逃し続けていました。

やっと自分の手で掴んだ留学。

短期だったけれども、毎日が新しい発見の連続で新鮮だったあの日々は今でも忘れられない大切な思い出です。

(通っていた学校はこちら→ ミュンヘンのおすすめ語学学校「Deutsch Akademie」

語学学校のプログラムを修了した後は、約2週間ドイツの主要な街を周遊して日本に帰国しました。

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ケルン大聖堂

旅の割と序盤で訪れたケルン。

ケルン大聖堂が素敵だし、ケルンのビール"ケルシュ"はとってもおいしいし、ずっと行きたかった美術館コルンバも最高だし、街もコンパクトで可愛くて、お気に入りの都市の一つになりました。

 

ケルン最終日、私は中央駅から長距離列車に乗って次の街へ移動する予定でした。

最後にケルン大聖堂をもう一度拝み、電車に乗る前に駅の売店でアーモンドたっぷりの甘いNougatbrezel(ヌガープレッツェル) を購入し、思い出の詰まった重いスーツケースを引っ張ってホームまで移動。

ドイツ鉄道にしては珍しく、私の列車はきちんと定刻通りにやってきました。

 

列車とホームの間には大きなギャップがあり、段差も高かったため、重いスーツケースを乗せるのも一苦労。

近くにいた人々が手伝ってくれたおかげでスムーズに乗車でき、列車も無事に発車しました。

ホリデーシーズンのためか、車内は大混雑。

特にドア付近は身動きできないほど混雑していましたが、私は指定席のチケットを購入していたので席が保証されていました。

列車が発車してから3分後くらいになんとか自分の席までたどり着くことが出来ました。

 

ホッと一息つこうとしたそのとき、違和感を覚えました。

クロスボディバッグのチャックが開いているではありませんか。

嫌な予感がします。

そしてその予感は的中してしまいます。

 

財布がない。

 

事もあろうに、私はドイツで財布を使っていました。

どういうことかというと、普段私は海外生活では財布は使わず、最低限のカードと小銭を小分けにして万が一盗まれてもダメージが少ないように対策をしているのですが、なんといってもドイツは現金社会。

財布を使用しないと非常に不便なことと、「治安がいいから大丈夫か」という気の緩みが仇となり、スリの標的になってしまったのです。

その上、日本で使っていた財布をそのまま使っていたので、現金やクレジットカードのみならず保険証や免許証などが全て財布の中に……。

 

もう、パニックです。

大パニックです。

頭の中が真っ白です。

とりあえず隣のお兄さんに「私の財布見てない!?」と聞くも、返事はもちろん「Nein(No)」ですよね、そりゃ、なんで聞いたんだ。

念のために背負っていたリュックの中身も確認してみるけれど、もちろん財布は見当たりません。

最後に財布を見たのは乗車前にNougatbrezelを買ったとき。

ということは、車内で盗まれた可能性が高いです。

ということはだ。

犯人が車内にいる可能性がある。

もう、脳内はオリエント急行殺人事件ですよ。

誰だ、どいつが犯人か!お前ら全員か!!

スーツケースを持ち上げるのを手伝ってくれた人が手伝うフリして盗んだのかな、それとも混雑していたドア付近でどさくさに紛れて盗んだのかな、にしてもバッグはチャック付きのクロスボディだし、体の前に持っていたし、なんて華麗なテクニックなんだ……と一瞬感心してしまいそうになったけれど、気持ちを落ち着かせて車掌室へ向かうことにしました。

 

こんなパニック禍でドイツ語で説明なんて出来るわけがない。

英語が通じることを祈って車掌さん達に「ドイツ語がうまくないので英語ですみません、財布を盗まれてしまいました」と伝えました。(ドイツはたまーに英語が通じない。)

一人の車掌さんが大丈夫?どこで気付いたの?車内で盗まれた確信はある?など英語は得意そうではなかったけれど親身になって色々質問してくれ、「まれにだけど、スリは財布の中身だけ盗んでゴミ箱に捨てることがある。探してみよう。」と各車両のゴミ箱を一緒に回って探してくれました。

財布の中に入っていた現金は60ユーロ。

現金は返ってこなくていいから、財布だけでも返ってきて欲しい。

気に入ってたんだ、あの財布。

1ゴミ箱ごとに「頼む!!あってくれ!!」と強く念じましたが、想いは届かず。

 

「うん、残念だけど、ないね。クレジットカードは全部止めるんだよ。それから、目的地に着いたらすぐに警察に行くんだよ。そしてポリスレポートをもらうんだ。」

車掌さんにアドバイスをもらい、私はお礼を述べて自分の席に戻りました。

(あのときの車掌さん、本当にVilen Dank!!)

 

幸いにも私が盗まれたのは財布のみ。

パスポートや携帯電話は盗まれませんでした。

パスポートなんて財布のすぐ傍にあったのに。

とりあえず冷静になってクレジットカードを全て止めようと行動に出ました。

スマホのブラウザを開いてクレジットカード会社の番号を検索しようとするも、ドイツのネット環境のクソさ加減のせいで検索すらままならない。

(ドイツは主要都市のネット環境こそそこそこいいけれど、駅と駅の間の農園地帯などは電波が全然ない。)

幸いにもまだ日本時間が人間が活動している時間だということに気付き、両親にLINEでメッセージを送って事情を全て説明。

メッセージくらいならこのネット環境でもなんとか届くだろうという予想は的中、無事に送信が完了し、ラッキーなことに両親もすぐに既読をつけてくれました。

理解の早い両親のお陰で、カードの止め方、コレクトコールで無料通話ができること、代理カードが明日にも受け取れること、カード付帯の海外旅行保険で財布代が返ってくることなど、欲しかった情報が全て手に入りました。

保険を適用させるためにもポリスレポートがとにかく必要だったので、兎にも角にも警察にはいかなくてはなりません。

はぁ、しかもこれ帰国後も免許証や保険証を再発行する必要あるやつじゃん、完全に元どおりになるまで長期戦じゃん、超絶めんどくさい……

冷静になればなるほど、気が重くなるばかりでした。

 

ドイツ旅行に慣れている友人のお姉さんからも貴重なアドバイスをいただけました。

ドイツ鉄道の落し物サービスに登録ができるということや、目的地の最寄りの交番などを教えていただきましたが、やはり交番に届けるのは絶対とのこと。

貴重なドイツでの時間が削られてしまう……しかも次の目的地では友人と会う予定だったので、その友人との時間も削られてしまう……悲しくなりました。

 

目的地に到着。

重い足取りながらも、お姉さんから教えてもらった交番にすぐに赴きました。

幸いにも順番待ちの列はなかったため、そのまま空いているカウンターに行き「すみません、英語で話してもいいですか?」とお兄さんに話しかけました。

「んー、僕英語あんまり得意じゃないんだけど、最善を尽くすよ。」と苦笑いするおまわりさん。

こんがり焼けた小麦色の肌と、褐色の瞳と髪の毛が綺麗な、ドイツ人にしては少し小柄の男性。

な、なんなんだこの人……かっこいい……

 

詳細な質問をあれこれ受けました。

トレインナンバー、席の場所、自分の席に移動するまでに話しかけられた人はいなかったか、財布の色、メーカー、中に入っていたものなどなど……

ショックでまだ少しパニック状態の私を落ち着けるように、チョコレートを頬張りながらリラックスムードで仕事をこなすおまわりさん。(日本じゃ考えられねえ。)

「これが旅の序盤じゃなくてよかったよ、最初に盗難にあっちゃったらそのあともっと大変だもんね!」 

と優しい笑顔を向けられるたびにドキドキしていました。 

そう、気付いたときには私はドイツで2回目の盗難に遭っていたのです。

しかも今度は財布よりもっと厄介なやつ。

気分が落ちていたときに優しくされたからでしょうか。

一目惚れなんてほとんどしたことのない私が、ここドイツでこんな目に逢ってしまうなんて!

なんて厄介なの!

 

ポリスレポートに記入するため私の個人情報を質問される場面で、「君はシングル?」って聞かれたときにゃー、「はい!シングルです!(満面の笑み)」と答え、「あなたは?」って聞きたああああい!!と一人で脳内クスクスしてました。(気持ち悪い。)

といった具合で一連の質問が終わり、少しの待ち時間があり、無事にポリスレポートをゲットした私。

「このポリスレポートナンバーを言ってくれれば、君の案件だとこっちで把握できるからね。それからこの駅の忘れ物サービスセンターにも行くといいよ。でも今日のものは早くても明日届くことになるだろうから、明日の午前中訪ねてみて。」とイケメンが最後のアドバイスをくれました。

しっかりお礼を述べ、ポリスレポートを大切にしまい、私はその日宿泊するホステルに向かいました。

彼が優しく対応してくれたお陰で、私の気持ちもだいぶ落ち着いていました。

こんなイケメンに出会えるなんて、財布をなくすのもそんなに悪いことじゃないな。

いや、そんなことあるかい、最悪に変わりないわ!!

 

ホステルのフロントに"コレクトコールを利用するから電話代が無料である"ことを伝えて電話を借り、日本のクレジットカード会社の窓口にダイアル。(そのとき使っていたドイツの携帯電話のプランだとコレクトコールにダイアルできなかった。)

合計2社のクレジットカードを盗まれたので、両方とも使用の一時停止手続きを行いました。

その内1社が次の日の朝には代理のカードを届けてくれるということで、明日からはまたなんとか旅を続けることが出来そうと一安心。

 

その日の夜はその街に住む大学時代の友人らが街を案内してくれました。

ハンバーガーを頬張りながらその日のすったもんだを話し、現金もいくらか貸してくれて、疲労困憊な私に優しくしてくれて、本当に嬉しかったよ、助かったよ……ありがとう!!

 

翌朝、無事に代理カードをゲット。

こんなに対応が早いとはびっくりしました。カード会社様様!

ホステルをチェックアウトし、昨日イケメンポリスが教えてくれた駅の忘れ物サービスセンターに向かうべく場所をGoogleで探してみるも、どうしても見つからず。

駅周辺をうろうろしてみるも見つからず……どうしよう……

あ、交番に行って聞けばよくね?

私は再び昨日と同じ交番に向かいます。

今度はウキウキとした足取りで。

あのお兄さん、またいるかな?

期待は膨らみます。

 

交番に足を踏み入れカウンターをさっと見渡してみるもののも、昨日のお兄さんはおらず。

ウキウキしていた気持ちは一気にしぼみました。

財布をなくした現実が再び重くのしかかってきます。

そこにいたお巡りさんに忘れ物サービスセンターの場所を聞き、交番をあとにした私。

それから忘れ物サービスセンターを訪ねるも、財布はやっぱり届いていませんでした。

 

その日その街は街全体でどんちゃん騒ぎするイベントが行われており、警備も厳重。

街中に警察官がいました。

警察官を見かけるたび、彼の面影を探してしまう私。

しかし、やっぱり、そこに彼はいません。 

 

街を去る時が来てしまいました。

きっともう彼に会うことは二度とないんだろう……もう一度だけ会えたらそれでいいんだけどな……そんなことを考えながら次の街へ。

ドイツ周遊を続けました。 

 

ドイツはどの街もとても魅力的で、旅は日々とても充実していました。

大学時代の友人がドイツ中に散らばっているので、各地で彼女らと再会出来たのも貴重な体験でした。

だけどどこかなんとなく残るこの心のわだかまり。 

気付いたらGoogleで「警察 恋人」とか「警察 一目惚れ」なんて調べている私。

この時まで知らなかったんだけど、警察官と交際するのってめちゃくちゃ大変なんだね??

日本人同士でもこんなに大変なんだもん、ドイツ人となんてさらに大変じゃん、無理無理。

ネット上では私と同じような経験をして悩んでいる人もいる様子でした。

「助けてくれたおまわりさんに一目惚れしてしまいました、どうしましょう。」みたいな内容が書かれていて、わかるわーーーと同じ気持ちになってみたり。

 

せめて、せめて、もう一度お礼だけでも言えないかしら。

旅をしながら何日も何日も悶々とし続けていた私ですが、ある日急に閃きました。

というより、なぜすぐ気付けなかったんだろう、私。

私にはポリスレポートナンバーがある。

つまり、私からあちらのことを把握するのは無理でも、あちらからは私のことを認識することができる。

気付いたときには、私は彼が所属している部署にメールを送っていました。

 

 

ポリスレポートナンバー○○○○○。

先日は助けてくださり本当にありがとうございます。

あのとき私はひどく狼狽していたのですが、あなたの優しいサポートに本当に救われました。お陰様で現在無事に旅を続けられています。ありがとうございます。

正直に言います。私はあなたに一目惚れてしまいました。この気持ちも伝えたいと思いメールを送りました。突然の失礼なメール、申し訳ありません。しかし、後悔したくなかったので……

お返事お待ちしております。

 

 

今思えば私、めちゃくちゃ気持ち悪いわ。

まぁ当時も気持ち悪いなぁって思ってたけど。

でも、どうしても後悔したくなかった。

返事が来るなんて端から期待してなかったし、どうせなら送ってしまえ!!と。

相手からしたら恥ずかしいよなぁ、部署の人から「おいお前〜こんなメール来てるぞ〜」って言われるんだもんな。すみません。

でも、それでちょっといい気分になってくれたらいいな。

感謝の気持ちが伝わればいいんだ、前半だけでも伝わればそれでいい。

私は本当に彼に助けられたから。

 

そんなこんなでそれから約1週間後、最後に愛しのミュンヘンで白いソーセージを頬張って、私は日本へ無事に帰国しました。 

もちろん彼から返事は届きませんでした。

財布も見つからないままです。

帰国してすぐに友人らと大勢で集まって飲む機会、名付けてNao会があったのですが、私は「きちんとドイツからネタを持ち帰ったからな」と自信満々で挑みました。

私がドイツで財布とハートを盗まれた話は大ウケし、Nao会のみんなに強烈な印象を植え付けました。(と私は思っている。)

それからの日々は、保険証を再発行したり運転免許証を再発行したり保険の補償の申し込みをしたり、1回目の盗難に関する対応に追われてとにかく忙しく、嵐のように過ぎ去っていきました。

おまわりさんから返事もなかったことだし、全く期待してなかったし、2回目の盗難については思い出す機会がほとんどありませんでした。

 

それから数日後、家で一息ついていたときのこと。

ピローン

携帯が鳴りました。

誰からだろう?

チェックすると、馴染みのない送信者名。

んん??

あれ……?

これって……もしかして……

震える手でメールを開きます。

 

 

先日はメールありがとう。

僕はただ義務を果たしただけだから、お礼なんてとんでもないよ!でも、メールをいただいてとても嬉しかったです。

残念だけれど、僕は独身ではなく大切な子供もいる身です。どうやら僕らの出会いは数年遅かったみたいだね。

君の旅が安全で良いものになりますように。それから、別の"いい人"にも巡り会えるよう祈ってます。

もう何も盗まれないようにね! ;)

 

 

えっ……私振られてるのになぜかすごく幸せな気持ちになってる……どうして……

僕らの出会いは数年遅かったみたいだね。

 

それは例のおまわりさんからの返信でした。

このメールのためだけに取得したであろうフリーのメールアドレスから送信されていました。

返信が来たことが信じられなくて何度も何度も読み返しました。

僕らの出会いは数年遅かったみたいだねって…………………明日からどんどん使っていきたいフレーズナンバーワンだよ!!!!どんだけ素敵なんだ!!!!!

私はソッコーでNao会のグループラインに「なんと返信が来た」と報告。

もちろん全員びっくり。

彼に感謝の気持ちと私の気持ちが届いていたということ、そして彼は本当に素敵な人だったということがわかり、とても幸せな気持ちになりました。

 

あれからもうすぐで2年経ちますが、今も反省を生かして常に盗難対策を怠らないようにしています。

ドイツのみならず、ヨーロッパは日本と比べると盗難が多発する地域です。

治安が良さそうに見えても、いつだって気を抜いてはいけません。

アジア人はとくに目をつけられやすいと言われています。

言われてみればあの日、私はよりによっていつもより綺麗めの服を着ていました。

それもあって目をつけられていたのかもしれません。

目をつけられた時点でアウトなのかもしれません。

チャックをきちんと閉めて体の前側に持ったクロスボディバッグから全く気付かれずに財布を抜き取るなんて、完全にプロの技です。

十二分に気をつけなくてはなりません。

 

十二分に気をつけたとしても、ハートを盗まれるのはいつだって不意のことです。

こればかりはどうしようも出来ませんので、ご了承ください。

尚、このおまわりさんが特別優しかったからわざわざ返信をくれたのであって、ドイツの警察官がみんな返信をくれるとは限りませんので、何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。

 

Stay Safe!

 

↓私がこれまで経験した様々なトラブルについての記事もどうぞ(笑)↓